雑記ブログ

~中途半端で生煮えな知識でドヤります~

映画『ナポレオン』とにかく食事のシーンがめっちゃ多い


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映画『ナポレオン』を観た。
淡々とした映画。それが、映画が終わった後の感想だった。

そもそも、そこまで期待して観た映画ではなかった。
インターネットで前評判を確認すると、評価は高くない。数々の戦争のシーンは見応えがあるけど、ストーリーが淡泊であるとか、ナポレオンの人生を映画一本にまとめることに無理があるといった感想が多かった。

まさにそのとおりだと思った。ただ、このブログで感想を書くにあたって、それだけでは味気ないと思い、この映画を面白く観るためにはどうしたら良いかを考えてみた。

そして、この映画がリドリー・スコットというイギリス人監督によって作られたものであるということを軸に置くと、すごく楽しめるのではないかと思った。随所にイギリス人監督のナポレオンに対する皮肉が込められている。

2つのナポレオン像

中国の古代史の英雄。三国志や漫画『キングダム』の世界。
自分の印象では、ナポレオンは、そういった英雄の一人として捉えていた。たった、一人で戦況を変えることができる軍事の天才。学校の教科書に載っていたナポレオンの絵は、強い信念を持ち、颯爽と山を駆け上がっている。自分のナポレオン像はこの絵のイメージから出来ている。

ジャック=ルイ・ダヴィッド

ただ、同じ時代の別の画家は、異なる様子のナポレオンを描いている。そこには、‟理想化”されていない(あえて、少し貶めているような)、ナポレオンの姿がある。

ポール・ドラローシュ

学校の教科書に載っていた‟理想化された”ナポレオンのイメージを持って、この映画を観ると、映画とのギャップに戸惑ってしまうと思う。イギリスは、ナポレオン率いるフランスと実際に戦争した国だから、ナポレオンに対するイメージは、こちらの絵なのだろう。

ナポレオン法典」の具象化としてのジョゼフィーヌ

この映画で特に気になる点。それは、ナポレオンと妻ジョゼフィーヌの関係である。お互いの夫婦の感情が読み取れない。読み取れないまま、ジョゼフィーヌは不倫をしていて、ナポレオンは、ジョゼフィーヌに子供がきないということで、離婚した。

夫婦関係で、最も腑に落ちないところは、ジョゼフィーヌが病気で亡くなった後に、ナポレオンに対して、「あなたは必ず後悔する」みたいなジョゼフィーヌのナレーションが入ることである。何だか唐突さを感じたし、最後までナポレオン夫婦の感情が読み取れないままだったので、このナレーションには混乱した。

脚本が悪かったのかと思ったが、リドリー・スコット監督はあえて夫婦の感情を淡泊に書いたのではないかと、ふと思った。

ジョゼフィーヌは、「ナポレオン法典」の具象化として、描かれているのではないだろうか。

ナポレオン法典」は、フランス革命により勝ち取った国民の権利や自由が明文化された法典で、その後のヨーロッパの法律に大きな影響を与えた。但し、この法典には、妻は夫に従う、といったことが書かれている。

この時代から200年後の現在、「ナポレオン法典」で女性の男性への従属関係を取り入れたことは、ナポレオンにとって汚点になることはあっても、美点になることはない。

「あなたは必ず後悔する」みたいなメッセージは、「ナポレオン法典」を具象化させたジョゼフィーヌに言わせたのだろう。

イギリスのウェリントン公がめっちゃカッコよく描かれる

ワーテルローの戦いで、ナポレオンは、ウェリントン公が率いるイギリス軍に敗戦する。そして、退却を試みたものの、イギリス軍艦に捕まってしまう。ウェリントン公は、戦場で冷静沈着に描かれている。一方で敗者となったナポレオンは、ワーテルローの戦いでは、ただ突撃するだけの無策な人物として描かれている。

リドリー・スコット監督は、ウェリントン公に対して、親しみや好意、そして尊敬を持っていると感じる。そして、この映画を振り返ると、この監督はナポレオンに親しみを持っていないと思う。ちょっと露骨過ぎないかと思う。

とにかく食事のシーンがめっちゃ多い

この映画では、食事のシーンがめちゃくちゃ多い。朝食を優雅に食べるフランス貴族やナポレオンと妻ジョゼフィーヌの食事のシーン。ナポレオンは、ウェリントン公に捕まった艦上でも、島流しにあったセントヘレナ島でも食事をしている。ここまで多いと、この食事にも何か意図があるのではと感じる。めっちゃご飯食べてる、と思った。

そして、ビーフウェリントン

イギリスには、ビーフウェリントンという牛肉にパイ生地を巻いた料理があるという。
まさに、ナポレオンに勝利したイギリス人ウェリントン公が名前の由来である。捕らえられた艦上で、ナポレオンが食事をしている際に、ウェリントン公に対して、「この食事でフランスが負けた理由がわかったよ」みたいなことをつぶやいている。まさか、ナポレオンに、ビーフウェリントンを食べさせながら、イギリス料理はうまいなあ、と言わせている?

どんな生涯においても、栄光はその最後にしかない

ナポレオンの有名な言葉である。
この映画のラストでは、フランスから遠く離れたセントヘレナ島への島流しとなったナポレオンが、島の子供たちに、ロシアの首都モスクワを燃やしたは誰か、と問う場面がある。ナポレオンである、と回答を期待していたが、子供たちはナポレオンを知らなかった。そして、映画は終わる。

ここら辺の描写は、リドリー・スコットのナポレオンへの究極の皮肉だと思う。
そして、ラストに、ナポレオンによる戦争でのフランス人の死者数がエンドロールの前に現れる。ここら辺、監督の腹黒さにぞくぞくしてしまった。

リドリー・スコット監督に、そんな真意がなかったのであれば、申し訳ない。
言葉で説明はせず、映像だけで表現したものの中に、映画監督の真意を読み取ることができると思う。イギリス人監督のナポレオンに対する感情がわかったようで興味深かった。